RTA in Japan開催までの経緯

日本で開く初の大規模オフラインRTAイベント『RTA in Japan』まで残り3週間を切りました。

一度、RTA in Japanを開くまでにどのような経緯があったのかについてはお伝えしておいたほうがいいと思ったので、随分長い文章にはなりましたがこの場を借りて書かせていただきます。

Game Done Quickの登場

今では世界一のRTAイベントとなったGame Done Quick(GDQ)ですが、実はGDQが始まった当初はそれほど大規模なものではありませんでした。どちらかというとプレイヤー同士のオフ会のついでにTwitch配信をし、ついでに慈善団体への寄付も募ろうというようなイベントで、会場もかなりこじんまりとしたものでした。
これが、翌年には規模が拡大してプレーヤーも多く、また会場も豪華になり、年を追うごとにそれは加速し、いつの間にかホテルのホールを丸ごと貸し切って行うほどにまで成長しました。今では1イベントだけで日本円にして1億円以上の寄付を集めるほどのイベントとなっています。

私は初期の2010年に行われたGDQから全て視聴していますが、徐々に規模を大きくしていくイベントを見て、果たして日本はどうだろうかと危機感を覚えました。海外ではSpeed Demo Archive(SDA)というタイムアタック系の総合Webサイトがあったため、そこが起点となって一つにまとまることができましたが、日本では各々がゲームごとにバラバラにRTAを行っているというのが現状で、ゲームタイトルごとの繋がりはあれど全体をまとめるようなWebサイトがなかったのです(※)。

※正確にはありましたが、後述しますが今はあまり使われていません。

この状況を踏まえ、いつかRTAイベントを開くときにそれをまとめるためにと、本サイト『RTAPlay!』を作ったという経緯もあります。

日本のタイムアタックの歴史

ここで、日本のタイムアタックの進展について振り返ってみます。
幸いなことに、私はRTAという言葉が生まれる前から個人的にタイムアタックを行っており、少なくとも1990年代からの流れについては記載することができます。

ファミ通投稿時代

まず、一番最初にタイムアタックを発表する場として生まれたのはファミ通のやりこみビデオ特集です。
現在も存在している雑誌『週刊ファミ通』ですが、90年代から00年代くらいまででしょうか、その週刊ファミ通でゲームをやりこんだプレイの模様をVHSビデオに録画し、それを投稿してくれれば優秀なものは雑誌内に掲載するという取り組みを行っていました。雑誌に載るのも嬉しいですが、何より自分がやりこんだ内容を示せるということで、90年代当時から『タイムアタック』というゲームを早くクリアすることを競うジャンルでやりこみビデオを投稿する人が多くいました。

なお、このタイムアタックはRTAと違って実時間を測るというものではなく、ゲーム内セーブ(IGT)を競うもので、主にRPGなどで最終セーブポイントまでの記録を競うというものでしたので、今とは多少状況が異なっています。

ファミ通投稿の全盛期の90年代から00年代初頭までは、多くの方がファミ通にタイムアタックの動画を投稿していました。

ただ、ファミ通投稿はインターネットの隆盛で廃れることとなります。ファミ通に投稿するにはゲームの一部始終を録画する必要があったので、そもそもVHSビデオの金銭的な負担が厳しかったこともありますが、雑誌に載っても最終セーブポイントのタイムのスクリーンショットが掲載される程度で、そのタイムを出すまでにどのような経緯があったのかがほとんど説明されていなかったからです。

これが、インターネット上に投稿するとなると、自分の行ったゲームの詳細を全て掲載でき、また金銭面での負担もVHSビデオに比べると遥かに少ないということもあり、多くの方がファミ通投稿を止めてインターネットへと土壌を移していきます。

庭投稿時代

ファミ通投稿に変わって姿を現すのがインターネットです。インターネット上では、今でもそうですが自分のプレイしたタイムアタックの詳細なテキスト(レポート)などを残すことができます。
インターネット初期はゲームごとにそれぞれWebサイトがあり、そのWebサイトの掲示板などに各々が投稿するというものでしたが、ここにULTIMAGARDEN(通称:庭)というWebサイトが出来上がります。今でも『ULTIMAGARDEN 2nd』として存在しているWebサイトですが、私の記憶だと2000年~2008年くらいまでは庭に全てのタイムアタックのプレイヤーが集うというほどまでになっていました。

庭は、タイムアタックも含めて全てのゲームのやりこみの投稿を集い、それを掲載するやりこみ総合Webサイトです。基本的に性善説で運営しており、プレイヤーから記録を達成したとの報告があったら真偽は確かめずにとりあえず全てを掲載し、他の方から異論があったらプレイヤーに説明を求め、おかしな点があったら掲載を取りやめるという立場を取っていました。
当時はキャプチャ機器などが容易に手に入らなかったことがありますが、そもそもゲームの動画どころか画像すら著作権を考えると禁止で、そもそもゲーム画像などを掲載していたら警察に逮捕されてしまうというくらいの考えが主流だったため、記録達成の証拠としては詳細なレポートを求めるという方式を取っており、この方法でしばらくは運営できていました。

ただ、この方法には問題もありました。
一つは、詳細なレポートを書くのですが、その詳細という基準が年を越えるごとに増してきて、下手をすると記録を達成するためにプレイしたゲームのプレイ時間以上の時間をレポートの執筆に取られるということもあったのです。
また、ゲーム内時間を計るTAではなく、実時間を測るRTAという遊び方が出来始めたのもちょうどこの時期なのですが、RTAでは詳細なレポートを書いての不正が容易すぎたのもあります。実際には私は不正はしていなかったと思っていますが、庭に投稿されたRTAが不正なのではないかと異議を申し立てる人も出ていたりして、レポートのみでの限界も見え始めていました。

ちょうどその頃、今でもこれは行われていることですが、ゲーム画面をそのまま配信して流すという、ゲーム配信が確立され始めた頃でもあります。ただ、ゲームの動画どころか画像も認めていない庭とゲーム配信を行う配信勢とは考え方に違いもあり、配信勢が主流になったことから庭はいつの間にかあまり使われないWebサイトとなってしまいました。

ゲーム配信時代

時期的には2004年頃からですが、ゲームを配信するという試みが行われ始めるようになりました。
ゲームを配信するのだから自動的に実時間を競うことになるということで、この頃からRTAが爆発的に行われ始めるようになります。

ゲーム配信の歴史を辿ってみますと、実は現在ではRTA配信の最大手となっているニコニコ生放送(ニコ生)が最初の配信プラットフォームではありません。初めはPeerCastというツールを用いて配信を行うものと、Windows Media Encorder(WME)というツールを用いて直接視聴者に配信画面を流すというものが主流でした。

このうち現在でも配信が多く行われているPeerCastについては今でも知らない人が多いのですが、2004年当時はゲームの動画を配信で流すというのがかなりアングラなものだったということ、ツールの仕様上設定がよく分からない人が来るとその人より後に配信を繋げる人が視聴できなくなってしまうこと、また、語尾に可能な限り草を生やす(wwwwwwなど)といったような独特なネットスラングが発達したコミュニティであったため、出来る限りPeerCastというものがあることすら隠蔽しようという考え方が主流な配信プラットフォームです。優秀なRTAプレイヤーも多くいますが、正直なところPeerCastのプレイヤーにコンタクトを取ることすら困難なこともありました。

これに対し、ニコ生はそのような隠蔽体質はないものの、コミュニティごとというよりはゲームのシリーズごとにプレイヤーが交流を深めているというのが現状で、それ以外の横の繋がりがあまりありません。また、ニコ生の放送は30分毎に配信が途切れてしまうという仕様があり、配信自動化ツールはあるもののRTAをプレイする場としては正直なところ向いていません。最近ではニコ生で配信はしないけれど、ニコニコ動画にRTA動画を解説付きで投稿はするというような方も増え始めてきています。

配信プラットフォームについては、他にもTwitch勢やCaveTube(かべつべ)勢やAbema Flesh!勢など、RTAを行なう配信プラットフォームも多岐に渡っています。

プレイヤーの分断

一番最初の話に戻りますが、GDQはSDAに全てのプレイヤーが集まっていて、配信プラットフォームもTwitch一強だったため、相互の意思伝達が容易で簡単に人が集まり、大きなRTAイベントを開くことができました。

これが、日本で考えるとそうもいきません。2008年頃までは全てのプレイヤーが庭に集まっていたのですが、そこから先は配信プラットフォームごとにまず分かれ、そこからさらにゲームごとに分かれてしまっており、プレイヤーが分断しすぎていて一つにまとめるのが物凄く困難になってしまったのです。

RTA in Japan開催に向けて

私は常日頃からこの状況はいくら何でもまずいと考えていたため、2年前に実験的に当サイト『RTAPlay!』を設立するに至ったわけです。
RTAする上での総合情報サイトはそれまで皆無だったので、当サイトを作ったことによってある程度はそれが緩和されたのではないかと思っており、また当サイトを作ったことによってRTA in Japanを開く際のプレイヤー集めも比較的スムーズに行きました。

また、配信プラットフォームやゲームシリーズごとにプレイヤーが分断していた件については、Twitterが日本で流行りだしたことでかなりの改善が見られました。Twitterなら気軽にリプライ等でコンタクトを取ることができるため、それによって横の繋がりが徐々に出来始めていったのです。

全ての配信プラットフォームを含めて人を集める機会を長年探っていましたが、2016年の現在ならそろそろ出来るだろうということで、私が動いて企画することになったのが今回のRTA in Japanです。

実は、今年の夏に既に日本のRTAに興味を持たれている海外のTwitchの方とは通訳を交えながら話しているのですが、その時に言われたこととして「日本のRTAプレイヤーが相当優秀なのはこちらでも認知しており、日本でもRTAイベントを開けるようにと思っていたが、誰が代表なのかが分からず声の掛けようがなかった」というようなことを言われました。私がこれはまずいと痛感していたところが海外のTwitchのほうでも悩みだったらしく、イベントを開く土壌として色々と手を回していて本当に良かったと思っています。

幸いなことに、最初の開催ながらかなりの豪華メンバーに集まっていただけたのが今回のRTA in Japanです。さらに、Twitchの方が色々と手を回してくれたので、最初の開催ながら英語でのコメンタリー付きミラー配信を行ってくれることも約束されています。

今回のイベントを成功させて、是非2回目、3回目のイベントと繋げていきたいというのが正直な気持ちですので、参加されるプレイヤーの方も、当イベントを現地、またはTwitch配信上で視聴をされる方もどうか盛り上げていただければと思います。

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カテゴリー: イベント
RTA in Japan開催までの経緯” への1件のコメント
  1. 匿名 より:

    ニコニコ動画だって2ch(及びpeercastなど)の流れを大きく引き継いでいますし、その上で十分な独自文化を築いてるので、隠蔽体質の理由に「草文化」は該当しないと思います。

    それはそうとニコ生のおかしな所は、利用者がサイトへ不満を吐いてるのを普通に見かけるところ。
    30分枠とか画質とかサーバーの重さとかプレーヤーの仕様とか常々文句を言ってるのに、「だって人が集まるんだもん」の一言だけで利用を継続する。
    では厳正な記録を求められる時はどうするかと言えば、外部サイトにも同時配信する(しかも今は大体twitch)。でもこちらを確認してる人はほぼいない。

    ここに現状打破のヒントがあるのかなとか、ニコニコ動画に投稿する人の増加(こっちはまた別の理由もあるでしょうけど)につながってるのかなとか、たまに考えたりしてます。今回のイベントでこれらの状況に変化があれば良いなと思います。

  2. kupibo より:

    今更ながらRTA in Japanの存在を知って、今ちょうど視聴しています。
    こういうイベントがあったということは知ってはいましたが、最近まであまり気にすることなくスルーしていました。
    ですがAUTOMATONさんで長い間特集が続いているのが気になり、それから過去動画を一つ見てみたところ、視聴5分経たずに「これは面白い企画だ!」と、一気に先週から視聴し続けています。

    プレイヤーと実況のかたの2、3人で解説しながらのプレイなのもあり、知っているゲームも知らないゲームもとても楽しく視聴できています。
    それぞれのプレイヤーに大なり小なりミスがあったり、予想外のハプニングが起こったりした時など、皆さんの表情やリアクションなどが画面で見れてとても親近感がわきますね。
    こういった大きなイベントが定期的にあることで、きっとプレイヤーの皆さんにとっても目標になり、モチベーションにも繋がるのかなと思います。
    また、有名・無名の作品を問わず、皆さん口をそろえて、「RTAはとても面白いからぜひやってみてほしい」と言っていたのも印象的でした。

    こういった横のつながりを強めるというイベントには大きな意義があると思いますし、ゲーム好きとして今後も続いてくれれば嬉しいなと強く思いますね。
    一つ要望があるとすれば、プレイ後に走者に感想を述べてもらう時間などがあったら嬉しいですね。

    開催していただいて本当にありがとうございました。
    今後の展開も期待しています!

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